ABCの構造とその革新性
(『立命館経営学』第34巻第5号 1996年 1月 pp.225-252)
本稿では、製品原価計算手法として発展してきたABCが、形式的には伝統的な原価計算方法のそれを継承しつつも、コスト・ビヘイビアを生産量との関わりでのみ捉えるのではなく、活動というかたちで非生産量関連のコスト・ビヘイビアをも捕捉し、製品と間接費との間にあらたな因果関係を構築したこと、そしてかかる点が、原価の発生源泉である活動をしてあらたな原価管理への有用性を示していることを指摘した。すでに、活動に基づく原価管理はABCM(Activity-Based Cost Management)として展開しており、その事例もまたいくつか報告されている。
ABCが、多面的な展開の可能性を秘めているのは、それはABCが企業を活動の集合体と捉え、その最小単位である活動の原価を把握することによって、プロセスや組織といった構成単位に原価を集計するにあたり、タテにもヨコにも積み重ねることによって多様な原価情報ニーズに対応できるからに他ならない。Brimsonは、ABCによって得られる活動単位原価がビルディング・ブロックを形成し、したがって活動原価が一度知られれば、製品や製品ライン、組織的単位、顧客、流通経路、ビジネス・プロセスといった多様な原価計算対象への集計が可能になるという。
これは、伝統的な原価計算にはみられない重要な素材的側面に関する発展である。しかし、算定される原価は、その報告目的との適合性、いいかえれば関係性によってその有用性が認められるものである。したがっていかにABCが論理的と考えられる前提に依拠して測定構造を発展させ、製品原価数値を改善し得たとしても、Johnsonが指摘するように、グローバル経済を特徴とするこんにちの競争的環境にあって、企業が追求すべきものは、単に現在ある会計情報を再配列したにすぎない表面的な見直しではないとすれば、その有用性の減退は必然である。しかしながら、ABCによって提供されうる原価は製品原価のみではない。
ABCは活動の原価を提供することができる。したがってABCが、活動の連鎖、すなわちプロセスの原価を算定しうる可能性を有することは、活動の方法を変更することによって、どのようにプロセス全体の原価が影響されうるかということを明らかにできるということである。またこのことと関わって、ABCによってあらたな責任会計の視点が提供されることも指摘されよう。すなわち従来の部門といった組織的空間を単位として会計責任を追及し業績評価を行うといった観点にくわえて、製品の設計から顧客にいたるまでの部門横断的なプロセスといった観点があらたに付与されるのである。
これらは、戦略的重点がプロセスへと移行し、プロセスの改革や改善の事後的評価、あるいはその事前的な予測にたいする情報源がもとめられるとき、ABCはその有用性が認められうることを示している。しかしながら、この点にたいするABCの役割や最終的な評価は、プロセスとABCとの関わり、あるいはすでにJohnsonによって提起されているABCを含めた計数によるプロセス管理批判の検討を要するのであり、この点はまた別の機会を設けて検討することとする。




















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